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 ■ 全国紙  


button日本産業新聞   2000年1月5日

IT'S IT製造業 CATV、中小のインフラ「大容量 設計データ通信」

  本文より抜粋

CATV(ケーブルテレビ)を町工場の"専用回線"に活用しようー。そんな機運が中小企業の集積する地場産地で高まってきた。精密産業のメッカ、長野県諏訪・岡谷地域でCATV事業を展開するエルシーブイ(LCV、長野県諏訪市、藤沢玄雄社長)はケーブルを使った高速大容量のインターネット接続を設計データなどの通信インフラに広げ始めた。
"加入率80%以上"
諏訪湖周辺の盆地はテレビ難視聴地区という事情もあり、LCVの加入率は地域世帯数の80%以上と日本有数のCATV先進地だ。79年に主幹線をいち早く光ケーブル化。86年CATV事業者として初の第一種電気通信事業免許を取得、通信分野に参入した。 小型・携帯化するハイテク機器の超精密部品を手掛ける中小企業群は、職住近隣または一体の町工場も多い。各工場に引かれたCATV網を産業界に活用すれば、ISDN(総合デジタル通信網)に比べて「図面や画像データのやり取りはケタ違いの速度」(河西弘太郎メディアミックス推進部部長)に変わる。
( 中略)
「コンピューターとネットワークによる意思伝達システムと、自動化した機械が連動することで爆発的な生産能力を持つ"情報工場"が出現する」。これが山田社長(東京・新宿金型ベンチャー、インクス社長)が描くIT(情報技術)製造業だ。
実際の受注に壁
しかし、単に町工場をCATVで結べばIT製造業が実現するわけではない。「ネット上に会社の情報を並べても単なる電話帳に過ぎない。そうした情報だけで無名企業が受注するのは難しい」。CAYV先進地の諏訪・岡谷地域で中小企業や地場産地のネット化を進める「諏訪バーチャル工業団地」を立ち上げたインダストリーウェブ研究会(長野県諏訪市)の大橋俊夫代表は新たな問題に直面する。
同団地は"e-ものづくり"をキャッチフレーズに共同受注や情報発信・交換を目指して約130社、150人が参加する盛況ぶりだが、受発注や設計データのやり取りには品質や納期保証が普及にブレーキをかけている。「ネット上で受発注するための信用評価基準作りが先決」(大橋代表)と言う。膨大な情報投資に二の足を踏む中小企業や地場産地は多い。 だが、家庭レベルでも浸透しつつあるCATVなど新たな高速大容量信網は、中小製造業を変える武器にもなる。IT製造業の潮流を傍観するか、まずは"電話帳"からでも積極的に身を投じるか。目を転じれば、そのための情報通信インフラは身近に押し寄せつつある。





 


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